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日めくり汀女俳句Ⅱ №10 [ことだま五七五]

一月二十七日~一月二十九日

           俳句  中村汀女・文  中村一枝

一月二十七日
煮凝(にこご)りの溶けて渉むや温め飯

        「汀女初期作品」 煮凝り=冬
 小学生の時、国語の本に載っていた詩。だれの作か忘れたが、冬の朝、白菜のさくさく
と歯ごたえのある漬物を食べ、熱い味噌(みそ)汁を飲み、霜柱を踏んで学校へ行くという、その詩を長い間ひどくぜいたくなものに思っていた。
 戦争のため厳しい耐乏生活を強いられることになったからだ。学校へ行きながら、この詩を思い出し切ないような、やるせない気分になった。熱い白米のご飯に白菜の漬物なんて、もう一度、口にできる日がくるのだろうか。寒い朝がくる度いつもそう思っていた。

一月二十八日
身に温き日差の中に枯るるもの
             『紅白梅』 枯れ=冬
 つい先頃の日曜日、用事があって原宿の竹下通りを通った。その人混みと若者の多さ、さらに両側の店に並ぶ品物の安さ、お上りさんよろしく、左右キョロキョロしなから楽しんで歩いた。後で息子に「日曜日にあの道通ってくるおばさんはただ者じゃない」と言われた。
 茶髪も金髪も顔黒、厚底ブーツも見本市みたいに何でもあった。ほとんどが地方の中高校生だそうで、もう一つ垢抜けないのが可愛いような。場違いのおばさんも安心して歩けるところがおかしかった。

一月二十九日
冬薔薇(ばら)や日のあるかぎり暖かし
            『汀女句集』 冬薔薇=冬
 家を建てたとき、庭にばらを植えてもらった。懇意にしていた花屋さんは大張り切りで、広くもない庭に十本近く植えてくれた。主人の無精を補って余りある花屋さんの丹精で、ひと頃は道ゆく人が振り返るほど見事なばらが咲いた。おしゃべりが大好きで仕事が終わると一杯の茶碗酒を「こりゃいいや」とにこにこしながら呑んでいた酒好きの花屋さんも世を去った。
 ばらの木も一本一本と末枯れて、今は一本残った白いばらだけが咲いている。

『日めくり汀女俳句』 邑書林


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