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フェアリー・妖精幻想 №88 [文芸美術の森]

童話作品に描かれた妖精界 6

              妖精美術館館長  井村君江

 デユラックとゴープル
 現代の人々の脳裡にピーター・パンの映像を創りあげ、折々に特色ある妖精たちを描きだしたアーサー・ラッカムは、アール・ヌーボーの流れの線上にいた。が、現代妖精画家の双壁ともいうべきもう一人の画家エドマンド・デユラックは、その画風の源をオリエント、即ちペルシャやインドの細密画においている。そして、日本画の影響も多く、その上、生国であるフランスの洗練された感覚と筆致で、優雅な妖精たちを描いている。
 『妖精との日々』(一九一〇)を書き、別刷挿絵を入れ、瀟洒な装丁で仕立てているし、数多くの妖精画集『妖精の花輪』(一九二八)、『デユラックのフェアリー・テールズ』(一九一六)、『眠れる森の美女その他の物詰」(一九一二)等数多く出している。
 ウォーリック・ゴーブルが三十二枚の別刷彩色挿絵を入れ、ジョン・ファリファックスが再話した「シンデレラ」や「親指トム」の入った部厚い『フェアリー・ブック』(一九三一)は、今では話よりは挿絵と装丁の方が有名になっている。ゴーブルは一九二〇年代に水彩画家、挿画家としてドンの中央紙「ポール・モール・ガゼット」やウエストミンスター・ガゼット」誌などに達者で手堅い筆致の絵を載せて知られていた。
 一九〇九年の『水の子」をはじめ一九二四年には次々と『現代版チョーサー』やスチーヴンソンの『宝島』、『かどわかされて』等、文学作品の挿画を描いている。日本画や中国画の影響を強く受けており、『緑の柳と日本昔話』(一九一〇)からは日本の風俗にも詳しいことが各貢より窺える。
 ここに掲げた挿絵は『フェアリー・ブック』のものであるが、オリエント、特に日本画の構図や手法、配色の手法などの成功した例が見られるようである。どの頁の妖精や乙女たちの姿、顔や服装にも、この世のものと思えないほどの美と優雅さがあり高貴ですらある。それが簡略化された背景と重点的な人物配置で効果をあげている。
 この絵は『蝶』という物語の挿絵であるが「女王陛下を歓迎するために妖精が現われた」とキャプションにある場面である。女王の服の浮世絵の打ちかけのように長い裳裾が大胆に画面を横切っている。裾模様の鳳凰(ほうおう)もオリエントの幻烏であり、あやめの花もエキゾティックで、緑と赤のぼかしになった透明な蝶の翅の妖精が出現する異界(アザーワールド)の幻の雰囲気がよく現わされている。
 ゴープルは魅惑的な「運命の女(ファーム・ファタール)」のような妖精たちだけではなく、確かに珍しくはあるが小さく醜いダークエルフたちも描いている。鶏が夜明けを告げる木の枝の下、ツメ草の原で輪踊りをしていた緑の小さな妖精たちがあわてて消える支度をしているところや蝶に乗って飛ぶ小妖精も描いている。が、彼らは醜い出来そこないではなく、やはりどこかすっきりした愛らしさを残し、花や蝶と共にいる小妖精たちである。

W.Goble「フェアリーブック」.jpg
ウヲーリック・ゴーブル「フェアリー・ブック」よりr

『フェアリー』新書館


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