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いつか空が晴れる №43 [雑木林の四季]

    いつか空が晴れる
          -さらばモスクワ愚連隊―

                                 澁澤京子

 あれは夏休みも終わりの頃だった。ある日、母が兄に、私をディズニー映画に連れってってあげてと兄に頼んで階段の下でお小遣いを渡した。母が私を連れていくつもりでいたのに、用事ができたのだ。兄は中学生で、私は小学生だった。
映画館に着くと、夏の陽射しの下にはすでに行列ができていて(その頃は公開されたばかりの映画には必ず人が行列していた・・)こんな幼稚な映画は観てもつまらないよ、もっとかっこいい映画のほうがいいよと言い出した兄と二人で別の映画館で観たのは、「さらばモスクワ愚連隊」だった。ディズニー映画に比べると人もまばらで館内はすいていた。

ディズニー映画じゃなくてがっかりしたものの、加山雄三扮するジャズピアニストの映画に最後まで夢中になった私。ストーリーはよく覚えてないので音楽に引きずられて思わず観てしまったのだと思う。今見ると、富樫雅彦,宮沢明子、日野皓正というそうそうたるメンバーの演奏は小学生でも惹き込んでしまう力があったのだ。

ディズニー映画の音楽ばかり聴いていた子供の私にとって(昔はビデオ、DVDというものがなかったので、子供はディズニー映画のレコードをかけて繰り返し聴いたのであった)初めて聴いたジャズは強烈だったのである。

映画の最後のほうで、暗い舞台にぽっかり一人浮かぶジャズマンのトランペットの演奏シーンは今でもはっきりと覚えていて、あれは日野皓正だったんでしょうか。子供の私はうすぼんやりと、大人というものは孤独なものなのだ、そして孤独というものはかっこいいものなのだと思ったのである。マル・ウォルドロンのLeft Aloneとかマイルス・デイヴィスのRound Midnightとか、ジャズには孤独な感じの曲が多い、その後10代後半にはジャズ喫茶でそうした曲をしきりに感心して聴いていたけど、結局私は大人っぽさと孤独のイメージに憧れていただけなのであって、当時は孤独がどういうものなのか、本当はわかっていなかったのだと思う。

映画が終わった後、兄はしきりに面白かったといい、母にはディズニー映画を観たことにしろと口止めされた。

「ディズニーは面白かったの?」
夕方になって家に戻ってから、母に聞かれた私は何も答えられず、結局ディズニーではなく「さらばモスクワ愚連隊」を観たことがばれて、兄は叱られたのであった。


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