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日めくり汀女俳句 №19 [ことだま五七五]

二月二十二日~二月二十四日

                  俳句  中村汀女・文  中村一枝

二月二十二日
春の雲さだまるままの座にあれば
           
『薔薇粧ふ』 春の雲=春
 子供の頃から私は自分の鼻の低いことが気になっていた。日記に鼻の低いことを欺いていたら、父に「お前の鼻は決して顔の調和を破ってはいない」と慰めの手紙をもらった。
 中村家に行って私が一番驚いたのは家族全員鼻が高かったことである。父も母も姉も弟も、出てくる人それぞれに隆々とそそり立つ高い山脈だった。
 その高い峰々に囲まれてみると私の低くて円い鼻はすんなりと居心地のいい思いをしていることに気がついた。私は初めて自分の鼻の存在感を確認した。

二月二十三日
恋猫に思ひのほかの月夜かな
              
 『都鳥』 恋猫=春
 犬や猫の好悪は何を規準にしているのだろうと思うことがある。犬のアニは散歩の途中気に入った雄犬に出逢うと四肢を踏んぼって動かなくなる。彼女の好みは耳の立った柴犬系、鼻ペちゃのシーズやバグ犬には目もくれない。目下相思相愛のゴン君、間違いのない雑種である。どう見ても美男には程遠い。私は彼を見ると江戸時代、大井川辺りにたむろ
していた雲助を連想してしまう。だが、彼の賢さ、情の深さは本物なのだ。男は顔じゃないね、深い思いのあふれた隈どりのある目についそう言ってしまうのだ。

二月二十四日
紅梅や風もまた定めなきままに
              『紅白梅』 紅梅=春
 一昨年、古いテニス友達の一人ががんで急逝した。百四十センチ、三十キロの小さい体で力一杯打っていた速球を思い出す。
 去年仲間四人が彼女の墓前にお花を手向け帰りに近くの梅園に寄った。元は名のある人の邸だったという風雅な庭園に馥郁(ふくいく)と梅の香りが漂っていた。それから五カ月後、その内の一人が急性白血病であっと言う間に亡くなった。健康そのものでテニスを楽しんでいた友人の立て続けの死、今でもコートに立つとふっと二人の姿が蘇る。今年も梅園は人で、にぎやかなことだろう。


『日めくり汀女俳句』 邑書林

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