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医史跡を巡る旅 №49 [雑木林の四季]

 「福岡 医の先駆者其の壱~貝原益軒」

                       保健衛生監視員  小川 優

「養生訓」で知られる、儒学者で医師でもあった貝原益軒は、寛永7年(1630年)福岡の生まれです。天下分け目の関が原から30年、父親は黒田長政の右筆(書記)を務め、医学の心得もあった貝原寛斎。益軒幼少の頃には島原の乱(1637~1638)がおこり、主君に従って父寛斎も出陣しています。若くして才能を表し、18歳にして長政の跡を継いだ黒田忠之に仕えます。が、ほどなく慶応3年(1650年)不興を買って閉居の上、浪人に。7年間の浪人生活の間も長崎や江戸へ行って勉強し、多くの人と交友します。のちの明暦2年(1656年)には忠之の次代、黒田光之に召されますから、益軒に理由があったというより、忠之側に原因があったのではないかと考えられます。忠之はどうやら困った殿様だったらしく、藩主に就く前から、父親である長政に金と領地をくれてやるから、百姓か、商人か、坊さんかになれ、つまり士分を捨てて家督を弟に譲れと言われたくらいです。殿様になってからは前代未聞、重臣が主君を、徳川幕府への謀反の疑いで訴えるという黒田騒動の当事者ともなります。

忠之の息子、黒田家三代光之に取り立てられた28歳の益軒は、藩費で京都に遊学します。以後7年間京都で本草学や朱子学、医学を学び、35歳の時に帰郷します。その後は博識をもって、あるいは典医として光之に仕え、邸宅と知行を賜り、黒田家譜をはじめとする多数の著述をなします。

「貝原益軒座像」
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「貝原益軒座像」 ~福岡市中央区今川 金龍寺境内

儒学を学び、後に養生訓を記すくらいですから、聖人君子的な生活スタイルを想像しますが、旅を楽しみ、京都遊学中には遊郭に通うなど結構奔放な日々を送っています。若気の至りか38歳の頃に体調を崩し、「病レ淋」に罹ります。ちなみに江戸時代、「淋」は尿道系、しもの病全般を意味します。今でいう淋病は明治以降の病名で、当時は膿淋と称されていたようです。益軒の寛文日記に書かれた症状、尿閉、間歇的な疼痛から改札すると尿路結石が疑われます。
これに懲りたのか寛文8年39歳で、22歳も年の離れたお嫁さんをもらいます。名前は初さん。秋月藩士の娘で才女。のちに貝原東軒と名乗ります。

「貝原東軒生誕地の碑」
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「貝原東軒生誕地の碑」 ~福岡県朝倉市秋月

前回ご紹介した緒方春朔の居宅近くに、貝原東軒生誕地の碑があります。東軒婦人、とくに書、和歌、筝、胡琴に優れ、益軒の著述の代筆も務めます。仲睦まじく、おしどり夫婦であったと伝えられますが、益軒さん、とっかえひっかえ3人もの妾のもとにも通ったともいわれます。ただ、とうとう子をなすことはできませんでした。

「貝原益軒顕彰碑および墓所」
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「貝原益軒顕彰碑および墓所」 ~福岡市中央区今川 金龍寺境内

ここまでの説明ですと聖人君子豹変して、知識欲が旺盛で、旅行好き、行動力も精力も有り余った人物像が浮かばれたと思いますが、実は益軒、かなり虚弱体質で病弱だったようです。そのためもあって、日々の健康保持に留意し、結果、当時としては大変な長寿を全うします。
さらに62歳と69歳の時と2回、夫婦連れだって遠く京都まで旅します。1回目は4か月京に滞在、2回目に至っては1年半に及び、三古湯のひとつといわれる有馬温泉に半月もとどまっています。今でいう退職記念旅行、少し前にはやったフルムーン旅行といったところでしょうか。
70歳に役から退き、著述に専念します。分野も教育書、博物誌、紀行と多岐にわたり、文体も平易でわかりやすく、読者に配慮したものとなっています。

養子を迎え、81歳で初孫を授かりますが、3年後東軒夫人に62歳で先立たれます。そして正徳3年(1713年)、自らの長寿を実証として「養生訓」を著し、翌年85歳の生涯を閉じます。

「貝原益軒、東軒の墓」
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「貝原益軒、東軒の墓」 ~福岡市中央区今川 金龍寺境内

益軒、東軒は生前同様仲良く並んで、住まいの近く今川の名刹、金龍寺に眠っています。

「金龍寺山門」
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「金龍寺山門」 ~福岡市中央区今川 金龍寺

養生訓は八巻からなり、第一、第二が儒学をベースに養生の目的と意義、第三と第四が食べ物や食べ方、飲酒の心がけや喫煙の害を説きます。そして第五が五感の役割、とくに口腔衛生の大切さ、第六に病気の予防と医者への掛かり方、第七に薬の効能と多用による弊害、最後の第八は老後の過ごし方を記しています。
現代においても有効な健康法とされるものが多く、日本における医療の原則「医は仁術」の記載や、多剤併用の戒め、8020運動につながる高齢者における歯科衛生など、超高齢化社会を迎えつつある現在の世相、社会問題を先取りした内容には驚かされます。

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