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フェアリー~妖精幻想 №98 [文芸美術の森]

 仮面劇、シェイクスピアバレエ、オペラ

                    妖精美術館館長  井村君江

ベン・ジョンソン作仮面(マスク)劇『妖精王子オベロン』

 十七世紀のイギリス宮廷では、王や貴族を歓迎する式典のためのページェントや、宴会席上の余興として仮面(マスク)劇が盛んに行われていた。
 耳で聴くセリフや詩よりも、目を楽しませる壮麗な舞台、奇抜な装置、豪華な衣裳が目をひき、次々と変化する場面を展開する、いわばスペクタクル劇が好まれた。
 舞台装置家であったイニゴ・ジョーンズ(一五七三~一六五二)は、イタリアで建築を学んで帰ると、ジェイムズ一世の王妃アンのお抱えとなり、特に劇作家ベン・ジョンソン(一五七二~一六三七)と組んで仮面劇を演出し、機械仕掛けやからくりの趣向をこらして華やかな舞台を作っていた。
 『妖精王子オベロン(一六一一)は、ベン・ジョンソンは皇太子プリンス・オヴ・ウエールズであるヘンリー王子を歓迎する祝宴のために書いたもので、ジェイムズ一世が外交官たちを招いての迎賓館の宴席で上演された。主題はアーサー王からジェイムズ一世までの歴代の理想の支配者を、オベロン王のフェ(フェアリー・ナイト)が祝福する一種のスペクタクル劇である。
 イニゴ・ジョーンズの考案による装置の絵が、デヴォンシャー・コレクションに保管されているが、劇のト書きに指示されたように、全景が広がると、「正面に輝く華麗な宮殿が現われる。その門も壁も透き通るように描かれ、その門の前にはシルヴァンが木の葉の衣服を着て、手には棍棒を持って眠っている」というような、岩間の城郭になっている。
 イニゴ・ジョーンズが描いたオベロン王は、白い羽根飾りのついたカブトに、金銀の胴着とヨロイをつけ、彫像の施された半長靴をはいた姿のデザイン画であり、なにかローマ白帯のコスチュームのようである。
 オベロン王はトランペットがひときわ高く吹き鳴らされるなか、三匹の熊に曳かせた車に乗り、三人の森の精を従えて登場してくる。
 森の精たちはじつにさまざまであり、ほとんどが半神半獣で、サチュロス、シレーメス、シルヴアン等バッカスの従者である。登場する「フェ」と「エルフ」はその当時女性の姿をとったらしく、また「フェはいつも輪になって踊り、その輪の中心にはオベロン王か、マブか、身分の高い者」が立っていたという説明がある。踊りと唄の賑やかな幕切れは、祝宴にふさわしい大団円である。
 ギリシャ神話の森の精(ときに酒神(バッカス)も登場したが、酒宴にふさわしい搭乗者であるといえる)や妖精たちの超自然の生き物たちの登場の仕方は工夫され、機械仕掛けによって、中舞台天井の「天国」と呼ばれる穴からクレーンで下げられたゴンドラに乗って下りて来たり、雲を形どった仕掛けの中に立って舞台を横切ったり、舞台空間を自在に使っている。わが国の歌舞伎のケレンや宙乗りのように、十七世紀の仮面劇でもこの工夫が、演出家の腕の見せどころだったようである。


『フェアリー』 新書館

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