知の木々舎
ニッポン蕎麦紀行№4

~海峡を渡った津軽蕎麦・函館市宝来町~

                                    映像作家   石神 淳
        
 津軽地方には、古くから豆乳で打つた独特の「津軽蕎麦」があると聞く。訪れた弘前や五所川原では見つからず、函館から大間経由で八戸の南郷に向かう途中で偶然見つけたと きは、小躍りするほど嬉しかった。

   函館の宝来町(旧鳳来町)にある「かね久山田」は、取り立て津軽蕎麦の看板を掲げているわけではなく、ごく普通の地元のお蕎麦屋さんだ。しかし、店主の中村るみ子さんが祖父山田青治から伝習した津軽蕎麦は、偶然に来店した客をして「これは津軽蕎麦だ」と唸らせるほど。「るみさん頼むよ」と、東京から飛行機に乗って食べに来るファンもいるとか。蕎麦好きには、けっこう東奔西走する人が多い。そう言う小生もだが。

  さっそく「もり蕎麦」を注文。喉越しよく、そば汁(つゆ)とのバランスも絶妙だ。お代わりを注文しすかさず喉に流し、「ウーン旨い」それとしか表現のしようがない。こんどは、生海苔をたっぷりのせた汁物の「花巻そば」を注文。これが・・・、津軽蕎麦は汁そばが旨いと噂に聞いていたが・・・感動しきり。

  うきうきした気持ちで翌朝店を訪ねる。空にはまだ満天の星。津軽蕎麦の仕込みは、すでに始まっていて、出汁(だし)に使うカタクチイワシが大鍋で煮立っている。(かえし)は使わず日毎に出汁をとる。厨房には、明治22年生まれの祖父から受け継いだ、ひびの入った年代物の捏ね鉢がふたつ、意外と狭い。中村るみ子さんは、前の日から水でうるか した大豆を擂鉢に移し、すりこぎで丹念にすりおろしはじめた。

  「豆腐の豆乳や、ミクサーで砕いた大豆を絞っても、独特のまろやかさがでないのよ。 機械まかせじゃ駄目ですね。重労働・・・だから後継ぎが・・・」
 とろろ芋をすりおろしたように、吸いトロ状になるまで作業が続く。女の細腕でこ仕事は、蕎麦打ちよりも手間がかかる重労働だ。
  「祖父とおなじ、頑固そば屋になりきらないと・・・・」 

  大豆をすり終えるころ、やっと窓の外が白んできた。すりおろした大豆を笊で漉し布で絞り豆乳が仕上がると
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(雑木林の四季)09-07-26 13:29


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